2016年06月07日

日本精神神経学会に参加

日本精神神経学会に参加してきました。

年に1回精神科の大きな学会があり、多くの精神科医師が集まります。自分の聴いた講演の内容を少しでもお伝えするつもりで行ってきました。


向精神薬と妊娠・授乳(村島温子先生)

 妊娠、授乳のとき薬はやめないといけないのか、薬のんでいるのに妊娠してしまった、産むのはやめたほうがいいのか、と悩みます。特に心療内科のお薬は「やめたほうがいい」という考えが強かったと思います。ただ最近の研究は、「妊娠したとたんに必要な薬を中止する例をしばしば見かけるが、妊娠を継続させ、母児ともにベストな状態で出産にもっていくために、薬でもともとの病気をしっかりコントロールする必要があることを説明し理解してもらっておく」(妊娠と授乳 伊藤信也、村島温子編集)方向です。

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妊娠中にお薬を飲んで、流産や先天異常がみられた場合は、その薬が原因と思われがちです。ただ、本来、自然流産率は、15%、先天異常の自然発生率と2-3%言われ、原因がなくても起こることも頭においてください。

 たくさんの種類のお薬のなかで、特に心療内科に関連のあるものをまとめます。

(1)抗うつ薬
 一番一般的に使われている抗うつ薬は、SSRI(パキシル、ルボックス、ジェイゾロフロなど)と言われています。妊娠中にSSRIを服用することと催奇形性の関連は、多くの国でたくさんの研究が行われていますが、最終的な結論はまだ出ていません。2005年パキシルで先天性心疾患が増加するという警告が出され、危険性が協調されすぎたために、妊娠中のうつ病治療薬をめぐり臨床現場が一時大変に混乱しました。その後の多くの調査でパキシルと心疾患の関連はないという報告も多くなされましたが、もしあるとしても「比較的小さいリスク」ということで多くの専門家の見解が一致しています。

 最近では、「妊婦の健康状態を安定させることを最優先にすることが、胎児さらには新生児・乳児の健康状態を安定させることにつながる」という点が非常に協調され、薬物治療が勧められる傾向になっています。

(2)感情調節薬(炭酸リチウム)
 炭酸リチウム(リーマス)は、 心奇形の発生率が上昇するとして、妊婦に対する使用は禁忌とされていた時期がありました。最近では、危険性が増すことも考えられますが、それはごくわずかで臨床的に問題になるレベルではないと言われています。リーマスをのんでいることで妊娠をあきらめる必要はありませんが、リチウムの血中濃度が最低レベルで維持されることが理想的とされています。

(3) 抗不安薬・睡眠薬
 ベンゾジアゼピン系薬剤の催奇形性に関して、口唇口蓋裂と関連があると問題になっていた時代がありましが、現時点では完全に奇形発生のリスクが否定されているわけではないにしても、もしリスクがあるとしても一般の奇形発生のリスクを大きく上回るものではないと考えられています。
 それ以外の抗不安薬・睡眠薬の場合、どうしても必要な場合は治療者と話しあいながらのむかのまないかを決めていくことが多いです。

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会場は幕張メッセ。きれいな空でした。
学会は3日続きましたが、私は1日だけ参加しました。


無事妊娠、出産したのち、授乳中のお薬のことも気になりますね。

 抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬のなかで、授乳に伴い新生児・乳児に合併症が実証されている薬剤は実際にはほとんどありません。たくさんの種類のお薬でない限り授乳は大丈夫と考えます。安易に授乳を中止することで、母乳育児を否定するのでなく、肯定的に支援していく姿勢が大切と言われています。

以上のことは講演の内容と、講演者の著書「妊娠と授乳」を参考にして書きました。

妊娠中のお薬のことで心配なこと、不安なことがあった場合、「妊娠と薬情報センター」に問い合わせることができます。「妊娠と薬情報センター」で検索するとホームページが出てきます。お電話で問い合わせることもできます。03-5494-7845です。

posted by terada at 15:17| 病気、その他について