2016年06月10日

学会のシンポジウムの1つ、「精神科臨床倫理の在り処 守秘義務をめぐる倫理的課題」

学会のシンポジウムの1つ、「精神科臨床倫理の在り処 守秘義務をめぐる倫理的課題」

 守秘義務とは、医療関係ないで言えば、医師、看護師、薬剤師などが、職務で知ったことを他に伝えた場合、処罰の対象になるものです。その情報は患者様が亡くなられた後も、もちろん医療関係者が仕事を辞めた後も守られます。

 患者様が診察上でお話しされたことは、患者様が「伝えてもいい」と同意して下さらない限り、会社の上司、友人はもちろんのこと、ご家族にもお伝えできないことになります。旦那様に通院していることを言わないでいらしている方もいらっしゃるだろうし、未成年の患者様でも、親には言いたくないと思う内容もありますよね。もちろん、ご家族にはどうしても伝えないといけないと判断した場合、例えば死にたい気持ちが強く、今日夜にでも死ぬつもりでいるとか、はご本人に、これはお母さんに伝えます、と伝え、できればご本人を交えてご家族と話あうという設定にします。
 会社の上司が主治医との面談をご希望されている時も、ご本人に了解を得て、上司とご本人と3人で話し合うようにします。

守秘義務に関しても、たくさんの問題があります。
 患者様が被害妄想により誰か特定の人を殺す、と強く思って、それを主治医に語ったとき、主治医の守秘義務はどうするか。などの他者被害防止のためは守秘義務はどのように解除されるのがいいのか。
 自宅の近所の人に対し「大声で叫んだり威嚇してくる」などの迷惑行為をしている。近所から保健所に苦情がある。その方がもし医療機関に通院されていた場合、近所の方にその情報は伝えることはできません。保健所など行政のスタッフさんと話し合うことになるのですが、守秘義務のない、地域の民生委員のかた、あるいはボランティアの方にはその情報は伝えられないことになります。

最近では認知症の方を地域で見守ることも多くなりました。その場合、医療情報をどこまで伝えられるのか、も今後の課題です。

 といった守秘義務に対するシンポジウムに参加しました。
 
posted by terada at 12:31| 病気、その他について

2016年06月07日

日本精神神経学会に参加

日本精神神経学会に参加してきました。

年に1回精神科の大きな学会があり、多くの精神科医師が集まります。自分の聴いた講演の内容を少しでもお伝えするつもりで行ってきました。


向精神薬と妊娠・授乳(村島温子先生)

 妊娠、授乳のとき薬はやめないといけないのか、薬のんでいるのに妊娠してしまった、産むのはやめたほうがいいのか、と悩みます。特に心療内科のお薬は「やめたほうがいい」という考えが強かったと思います。ただ最近の研究は、「妊娠したとたんに必要な薬を中止する例をしばしば見かけるが、妊娠を継続させ、母児ともにベストな状態で出産にもっていくために、薬でもともとの病気をしっかりコントロールする必要があることを説明し理解してもらっておく」(妊娠と授乳 伊藤信也、村島温子編集)方向です。

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妊娠中にお薬を飲んで、流産や先天異常がみられた場合は、その薬が原因と思われがちです。ただ、本来、自然流産率は、15%、先天異常の自然発生率と2-3%言われ、原因がなくても起こることも頭においてください。

 たくさんの種類のお薬のなかで、特に心療内科に関連のあるものをまとめます。

(1)抗うつ薬
 一番一般的に使われている抗うつ薬は、SSRI(パキシル、ルボックス、ジェイゾロフロなど)と言われています。妊娠中にSSRIを服用することと催奇形性の関連は、多くの国でたくさんの研究が行われていますが、最終的な結論はまだ出ていません。2005年パキシルで先天性心疾患が増加するという警告が出され、危険性が協調されすぎたために、妊娠中のうつ病治療薬をめぐり臨床現場が一時大変に混乱しました。その後の多くの調査でパキシルと心疾患の関連はないという報告も多くなされましたが、もしあるとしても「比較的小さいリスク」ということで多くの専門家の見解が一致しています。

 最近では、「妊婦の健康状態を安定させることを最優先にすることが、胎児さらには新生児・乳児の健康状態を安定させることにつながる」という点が非常に協調され、薬物治療が勧められる傾向になっています。

(2)感情調節薬(炭酸リチウム)
 炭酸リチウム(リーマス)は、 心奇形の発生率が上昇するとして、妊婦に対する使用は禁忌とされていた時期がありました。最近では、危険性が増すことも考えられますが、それはごくわずかで臨床的に問題になるレベルではないと言われています。リーマスをのんでいることで妊娠をあきらめる必要はありませんが、リチウムの血中濃度が最低レベルで維持されることが理想的とされています。

(3) 抗不安薬・睡眠薬
 ベンゾジアゼピン系薬剤の催奇形性に関して、口唇口蓋裂と関連があると問題になっていた時代がありましが、現時点では完全に奇形発生のリスクが否定されているわけではないにしても、もしリスクがあるとしても一般の奇形発生のリスクを大きく上回るものではないと考えられています。
 それ以外の抗不安薬・睡眠薬の場合、どうしても必要な場合は治療者と話しあいながらのむかのまないかを決めていくことが多いです。

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会場は幕張メッセ。きれいな空でした。
学会は3日続きましたが、私は1日だけ参加しました。


無事妊娠、出産したのち、授乳中のお薬のことも気になりますね。

 抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬のなかで、授乳に伴い新生児・乳児に合併症が実証されている薬剤は実際にはほとんどありません。たくさんの種類のお薬でない限り授乳は大丈夫と考えます。安易に授乳を中止することで、母乳育児を否定するのでなく、肯定的に支援していく姿勢が大切と言われています。

以上のことは講演の内容と、講演者の著書「妊娠と授乳」を参考にして書きました。

妊娠中のお薬のことで心配なこと、不安なことがあった場合、「妊娠と薬情報センター」に問い合わせることができます。「妊娠と薬情報センター」で検索するとホームページが出てきます。お電話で問い合わせることもできます。03-5494-7845です。

posted by terada at 15:17| 病気、その他について